NewOrlingsについて二日目、この日はとても多くの出来事があった。
フレンチクォーターへはバスで15分から20分。
着くなり、お菓子とジュースを購入しクォーターの中心にある大きな教会の入り口の階段で座って食べ始めた。
すると、一人の若い白人の男の子が話し掛けてきた。
「ねえ君、ちょっといいかなぁ?」 彼は大きなカメラを首から下げ、そのカメラを指差しながらこういった。「僕はいろんな場所で写真を撮って旅をしているのだけど、よかったらちょっと撮らしてもらってもいい?」 「ん?PlayBoyみたいに?」と僕は返事をし、彼は「ははは、それでもよいよ」と笑い、お互いに握手をした。
ちょっと座るポーズを変えて、お菓子の紙袋を持って片手にコーラを持つと言う姿を彼は何枚か写真に撮った。なんだか、モデルになったような気分で楽しい!
その後は、その彼とこれから何処へ行くのかなどをしゃべり、別れた。
次に僕は本屋さんへ向かいメキシコの地図とスペイン語の参考書を買った。そして、フレンチクォーターをたっぷり観光した。フレンチクォーターは前述のとおり、フランス人街なので作りもヨーロッパ式だし、お店もヨーロッパチックなものが多い。骨董品、絵画店、ガラス細工点などのお店とバーやパブが並ぶ町だ。そして、この町は音楽に満ちている。町の通りの角では、黒人の男の子がタップダンスで小銭を稼ぎ、小さな通りでは通りの真中にJazzを演奏するバンドがウッドベースやドラムを広げて演奏している。また、その隣の通りでは黒人のおじいさんがブルースハープでやはり小銭を稼いでいる。フレンチクォーターの中央にある教会の前では観光客の似顔絵を描いている画家が多数いたりと、とてもエンターテイメントがある楽しい町だ。そして、クォーターのはずれには大きな市場があり、ミシシッピ川で取れたワニの剥製(今もワニがいるかはわからないが)など、香辛料や野菜なども売られている。そしてその隣に綺麗なオープンカフェがあったのだが、そこにはとても多くの人が集まっていた。
そこでは、どうやらCMの撮影が行われているようで、日本人が描く、もしくは親しみがある綺麗な白人のモデルの女の子とハンサムな男の子が出演していた。
その周りを観光客がこれ見よがしに見物していたのだが、僕もその中に混じり見物してたときだった。
ブロンドのショートヘアの白人の女の子が話し掛けてきた。彼女の名前はナジャ。
ナジャはこのCM撮影のスタッフらしく、アメリカ人にしては珍しく美人だ。彼女は僕が何処から来たのかなどを質問してきたので、「ユースホステルからだよ」と答えると爆笑して、「いえ、あなたの国よ。」とかえしてきた。「今、CMの撮影をしてるのだけど、もしこのカットがNGになったらどう?あなたも出てみない?」と、とんでもない事を言い出した。「ええっ??CMに出る?え、僕が?」と僕はとても驚いた。「そうよ、といってもエキストラだけど、どう?」「うん、いいけど、PlayBoyのCMじゃないよね、これ?」「ははは、ええ、残念だけど。」
結局、このCMのカットはNGにはならず、僕の初出演は幻に終わった。そして、CMスタッフはそそくさとセットを片付け始めた。ナジャはまだ僕としゃべっていた。
彼女は僕の宿泊しているところなどや電話番号を聞いてきたが、地元ではない僕には到底説明など無理だった。そんな時、今度は僕よりちょっと背の高い黒人の男の子が話し掛けてきた。彼の名前はアンドレ。彼がアフリカの黒人でもアメリカの黒人とも雰囲気が違う事がすぐにわかった。何処となく品がある。アンドレはナジャの同僚だった。
ナジャは僕の事をアンドレに説明すると、アンドレは「じゃあ、今晩みんなで食事にでも行こうよ。りょう、ユースホステルに戻ったら、僕の携帯に電話をして。僕が車で迎えに行くよ。」と彼は話をまとめてくれた。だが、アンドレの英語は独特のなまりがあってなかなか聞き取れなかった。どの町に行っても女の人の映画は聞き取りやすいが男の人の英語は地方、地方のなまりがあってなかなかわかりにくい。
CMスタッフもみんな機材を片付けが終わり、引き上げようとしていたのでアンドレとナジャとも後ほど会う事を約束し、また別のところへ観光に向かった。
夕方にユースに戻ると、さっそくユースの住所を教えてもらいアンドレに連絡した。何とか話が通じて、30分ぐらいすると彼はユースに来てくれた。アンドレは仕事の帰りだったようなので、まず彼の家に向かった。
彼の車がまずすごかった。日本のBBがもっと大きくなったようなタイプで、乗り心地もよかったし、こんな車を持てる黒人はちゃんと働いてる証拠だろう。案の定、彼のマンションはとても綺麗だった。マンションの真中は吹き抜けになっており、吹き抜けには綺麗なガーデンが広がっている。マンション自体も黄緑やオレンジ色などを使ったカラフルでおしゃれなデザインだ。
そしてアンドレはあるビデオを見せてくれた。それはアンドレがあのマイケルジャクソンとCMで競演しているビデオだった。「さすがにあのマイケルジャクソンとのCMはとても緊張したよ。」と、他にも彼がCMに出演したビデオをいくつも見せてくれた。
もう夜の20:00ぐらいになっていたので、僕らはだいぶお腹がすいた。アンドレはナジャに連絡をとると、ナジャはまだ仕事が残っているらしく遅くなるので僕らは二人で食事に出かけた。そして、その後アンドレがよく行くと言うクラブへ行った。
平日だったのでがらがらで、僕らと他にお客が数名しかいなかった。そしてアンドレはなにやら電話をし、「りょう、他にも友達を呼んだよ。ナジャももう少しで来るよ。とりあえず二人で飲んでよう。」
そして、アンドレは自分の身の上を語ってくれた。「僕は純粋なアメリカ人じゃないんだ。フランス人とアメリカ人のハーフだよ。以前はLosAnglesの方にも住んでいたよ。あそこはいいところだね。でも、今度NewYorkの方へ行ってみたいと思っている。」僕は彼に今までのたびの経過を話した。そうしていると、ナジャやアンドレの友達がやってきた。
白人の男の人二人と黒人の女性だ。
白人の男は一人は痩せた気弱そうなやつで、もう一人はちょっとデザイナーぽい感じのやつで何処となくおしゃれだ。黒人の女性は、やはりアメリカでは珍しくすらっとした綺麗な女性でジャネットジャクソンのような感じだ。パンツスーツでばりっときめている。しかも、握手で挨拶をしたのだが、しなやかな身のこなしでまるで彼女のそばにはいつもカメラがまわっていてそれを意識しているようだった。
アンドレがそれぞれを紹介してくれた。
実はナジャもヨーロッパ系で、北欧系らしい。
まず、白人の痩せた彼はゲイだそうだ。そしてデザイナー風の彼がその痩せた彼の恋人だそうだ・・・そして黒人女性はオカマだった・・・
僕ら6人は一つのテーブルを囲んだが、とても不思議な気持ちだった。
ゲイとオカマと白人と黒人と黄色人種。まるで世界の全ての人種がこの一つのテーブルを囲っているようだった。
僕はつたない英語だったが、がんばって5人と話し彼らも何とか僕の言葉も自身も理解してくれたようだった。ゲイの二人は結構飲んだので、だんだん大胆になってきていちゃつくようになり、しまいにはチュッ、チュッとキスし始めた。正直、目の前にある光景をどう理解したらよいのか最初は戸惑ったが、彼ら二人が僕ら男女の恋愛以上に純粋に恋をしているのがだんだんわかってきた。
デザイナー風の彼がトイレに行き、しばらく帰ってこないと痩せた彼はすごく寂しそうな顔をするのだ。
しばらくすると、一人の白人の男が店に入ってきた。小さなかばんを持った痩せ型の男はしばらく一人でテーブルにつき、お酒を一杯飲んだ後かんばから注射器を取り出した。
それに気づいたアンドレは僕に目で合図をして、あまり見るなというような合図をした。そして、僕らはクラブの一番奥のテーブルに移る事にした。 その移る時にチラッとその白人の男を見たのだが、そいつは注射器でコカインをやっていた。ヤク中なのだ。
しかし一番奥のテーブルに移ったあと、アンドレやゲイの二人もコカインをやり始めた。彼らははなからテーブルの紙に広げた微量のコカインをはなから吸っていた。「りょう、お前もやる?」と誘われたが、さすがに断った。ナジャはマリファナをタバコにして吸い始めていた。ナジャも僕にマリファナをよこしたが、それは断らなかった。いまさらマリファナを吸ったぐらい、といった強気な気持ちがあった。
そしてアンドレ達が酒を飲みながらおしゃべりをしている間、僕とナジャは踊っていた。
僕は不思議な恍惚感に浸っていた。
知らない土地で知らないやつらと遊び、気に入った音楽で踊る。
もう何時なったかわからないが、例のオカマの黒人の女性(!?)は帰ることになったので、みんなでクラブをあとにし夜のフレンチクォーターへ向かうことにした。ナジャの車でオカマを家まで送り、ゲイの二人を乗せてフレンチクォーターへ向かった。僕はアンドレとアンドレの車で向かう。
車の中でアンドレと僕は音楽の話で盛り上がり、ちょうどその頃流行っていたローリン・ヒルをボリュームいっぱいでかけて町の中を走った。
真夜中のNewOrlingsの通りにはちょっとやばそうな黒人をしばしば見かけるが、僕らが大音量と大声で歌いながら走っていると、みんな手を振ってくれたりリズムにあわせて首を振ってくれたりしてとても楽しい。
夜のフレンチクォーターは昼間のように、街中で音楽を奏でる人はいないが、所々のバーやパブでJazzやBluesの生演奏が行われていた。
アンドレとナジャが連れて行ってくれた所はJazzもBluesもやってなかったが、他のお客もフレンドリーでみんなで盛り上がる事ができて最高に楽しかった。
店を何軒かまわった後、僕らは帰らなければならない事に気づいた。
そう、今日は平日だし、僕以外はみんな明日仕事がある。
帰る時、アンドレは僕に言った。「ナジャがよかったら、家に泊まりに来ないかと言ってるけどどうする、りょう?」 「うん、いいよ、ごめんね。」とナジャに断った。
ナジャは「うん、わかった。また、絶対にNewOrlingsに来てね。」と言ってくれた。
僕はなぜかそれに日本語で「うん、もちろん来る。また遊ぼう」と返事していた。
後で思ったのだが、ナジャとアンドレがたまに内緒話のような事していたのは、その事をナジャが話していたのだろうか・・・
ナジャがゲイの二人を送り、アンドレが僕をユースへ送ってくれる事になり、僕はナジャに再度、そしてゲイの二人に別れを言った。
ユースホステルに到着し、アンドレと最後の握手をし「ありがとう、ほんとにとても楽しかった。」と御礼を言った。
「いや僕も楽しかったよ。会えてよかったよ、りょう」「アンドレが日本に来る時には、連絡をくれ。」「ああ、ありがとう。良い旅を、りょう。」
そして僕らは別れた。正直言って、泣きそうな気持ちになった。実は食事や飲みに行った時のお金は全て彼が奢ってくれていた。国も違う人種も違う、全く知らない人間にこうも親切にできるだろうか?
僕は何か忘れていたものを思い出すことができたような気がした。口や理屈ではいえない何かを。
次の日の朝早くに僕はNewOrlingsを発った。なおきには昨日の出来事を話し、「ええなぁ、りょう。お前はええ旅をしてるなぁ〜。」とのコメントをもらい、お互いの旅の安全を祈り別れた。
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