車で20分くらい行った所に振興住宅地みたいなところに入った。
その一画におじさんの家はあった。おじさんの招きで家に案内されると、奥さんと娘さんが出迎えてくれた。どうやらさっき携帯電話で話をしていたのは奥さんだったらしい。
娘さんは中学生くらいだろう、やはり外国人の突然の訪問に驚いた顔をしている。
娘さんは学校で英語を習っているので通訳になってくれたが、彼女の英語は僕よりも未熟だったので4割ぐらいしか話が通じなかった。
おじさんは「こんなところでヒッチハイクは危険だよ。なぜそんなことをしてるんだ?」と言うので答えたが、娘さんの英語力では僕の旅の経緯を話してもスペイン語で話せなかった。
そんなことをしていると一人のおばさんがやってきた。おじさんと奥さんは35くらいだが、そのおばさんは50くらいの人で英語が話せるとの事だった。
そしてそのおばさんを通して、なぜこんなところでヒッチハイクをしているのか、なぜ軍隊に捕まったか、どうしてTijuanaを目指しているのかを語った。
やはりおばさんにも怒られた。「まあ、ビザの事はしょうがないにしてもどうしてヒッチハイクするの!メキシコはアメリカよりも危険なんだよ。全く・・・・もし警察にヒッチハイクをしているのが見つかれば捕まっていたんだよ!」
ちょうどお昼の時間だったので彼らは昼をご馳走してくれた。
そしておじさんはおばさんの英語を通して「ここからアメリカはPhenixが一番近い。もうメキシコを出てアメリカに戻りなさい。少なくともアメリカの方が安全だから。Phenixまでは僕らが連れて行くから。」と言ってくれた。
「ありがとう。」と御礼をしたが、「だが、僕らはアメリカに入ることはできない。メキシコ人だから。なので、そこまでの旅費を出すからそこからは自分で何とかしなさい。」
「いえ、それは受けれない。それにどのくらいかかるの?」
「500ペソだよ(5600円くらい)」 もちろん、メキシコで5600円は大金だ。日本で言う2,3万円くらいにあたるだろうか・・・そんなものを受ける事はできないと、「無理だよ!そんなお金は受け取れない。なら歩いてPhenixにいくよ。いいよ。絶対受けれない。」
と断るが、「いや、受け取りなさい。」と頑として譲らない。そこで僕は「じゃあ、僕が日本に帰ったら必ず返すから。」と申し出た。だが今度はおばさんが「聞きなさい。これはわたし達があなたに送るのではないのよ。神様があなたに送るの。だから私たちには関係ないのよ。」
そんなことを言われて僕は泣き出してしまった。
泣きながら「ありがとう。」とお礼を言うが、おばさんは「わたしたちにお礼を言うんじゃないよ。神様にお礼を言いなさい。」と言うだけだった。
そして彼らは僕を国境まで送ってくれた。
彼らはなんとUSドルでお金を用意してくれた。
おじさんは「じゃあ、僕らはここまでしか送れない。後は君が一人で歩いてゆきなさい。」 「はい。ほんとにありがとう。」とここでも泣きはじめてしまった。
おじさんたちは僕が国境を越えてもまだ手を振りつづけてくれた。僕は国境のゲートをくぐっるとすぐにアメリカとメキシコを分かつ金網の所に行き家族たちに大きな声でgracias(ありがとう)を連発した。
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